エッセイ
AI ハーネスを自分たちで持つ
Claude や OpenAI は、モデルだけでなく、その周囲のハーネス、エージェント、スキル、ワークフローへ進んでいます。そこを任せきるとロックインになります。
AI ハーネスを自分たちで持つ
大手モデル企業の動きを見ると、彼らはもはやモデルだけを売ろうとしていません。モデルの周囲にあるハーネスを売っています。エージェント、スキル、メモリ、オーケストレーション、コネクター、スケジューラ、ランタイム。トークンストリームより上のすべてです。
彼らにとっては自然な動きです。モデルはコモディティ化し、ハーネスは顧客を保持します。それでも、その流れには警戒すべきです。
ロックインそのものが商品になる
AI ハーネスを外部ベンダーに任せると、二つの力が効きます。
- モデルは変わる。 プロバイダーは重みを差し替え、量子化し、負荷時に小さなモデルへルーティングし、利用中のバージョンを退役させることがあります。評価はずれ、プロンプトは動かなくなり、再構築の先もベンダーが支配するものになります。
- ロックイン後に価格は上がる。 プラットフォーム戦略の初期は安価なクレジットと寛大な無料枠です。次の段階では、価格表が「シンプル」になり、たいてい高くなります。ハーネスがベンダーのものなら、切り替えコストはハーネス全体です。
Claude や GPT がスタックの 3% なら、状況が変わっても動けます。しかしエージェントフレームワーク、スキルシステム、ワークフローランタイムまで背骨にしてしまうと、簡単には動けません。
主権という退屈な言葉が指す深刻な問題
セルフホスト、ローカルファースト、オープンインフラ。呼び方は何でもかまいません。重要なのは、本番の AI ワークフローに責任を持つなら、それらがどう定義され、スケジュールされ、観測され、リトライされ、置き換えられるかを自分たちで制御すべきだということです。
- 可観測性。 ベンダー運用のオーケストレーションは、ベンダーが見せたいものだけを見せます。ログ、トレース、失敗が相手の製品面になります。
- 移植性。 独自のスキル形式やエージェント形式に書いたプロンプトは移植できません。それは方言です。
- 経済性。 ステップ単位、エージェント単位、メモリ単位の課金は積み上がります。オーケストレーションは自分でランタイムを持てば安く、借りると明細行になります。
これは最先端モデルを使うなという話ではありません。最適なモデルは使い続ければよい。ただ、モデルベンダーに周囲のグラフまで所有させないという話です。
OpenClaw とすでに始まっている変化
OpenClaw の流れは一過性の話題ではありません。開発者が独自エージェントハーネスのオープンな代替を求めているというシグナルです。自分たちの本番ロジックがベンダーのロードマップに吸収されていくことに、開発者は疲れています。
次の 10 年の AI インフラは、この 10 年のデータインフラに似ていくはずです。オープンで、ローカルファーストで、セルフホスト可能なツールが長期戦に勝ちます。ワークロードを運用するチームは、誰かのカーネルのテナントでいることを拒むからです。
Dagu であるもの、そうでないもの
Dagu は単一バイナリのローカルファーストなワークフローオーケストレーションエンジンです。外部データベースもメッセージブローカーも、運用しない管理プレーンも不要です。YAML を受け取り、DAG を実行し、ログをディスクへ残し、UI を localhost で出します。ラップトップ、Raspberry Pi、必要なら gRPC 経由のワーカーフリートで動きます。
AI ワークロードで重要なのは三つです。アプリケーションロジックへ侵入しないこと、使いやすく保守しやすいこと、必要になったときだけスケールできることです。Python スクリプトは Dagu を import しません。Go バイナリは基底クラスを継承しません。コマンドラインで動くもの、HTTP を話すものなら、Dagu はスケジュールし、リトライし、つなぎ、観測できます。
Dagu はエージェントフレームワークではありません。モデルラッパーでもありません。Claude のハーネスや OpenAI のハーネスになろうとしているわけでもありません。モデルやベンダーやスタックを替えても残せる、下の層です。
小さな例
小さなワークフローでも十分に考え方は見えます。Git の状態と直近コミットを読み、コーディングハーネスにリリースノートを書かせ、release-notes.md として保存する。これだけなら、型付きパラメータ、成果物保存、ハーネスのフォールバックだけで足ります。
重要なのは、モデル呼び出しもワークフロー内の一ステップとして扱えることです。失敗すればログが残り、再実行でき、成果物も残ります。AI 支援の処理にも、他の本番変更と同じ運用品質を持たせられます。
10 年の賭け
Dagu の背後にある賭けは複雑ではありません。モデルは安くなり、ローカル推論は速くなります。勝つのは、AI ワークフローを他の重要システムと同じように扱うチームです。所有し、バージョン管理し、観測し、移植できる形にするチームです。
オーケストレーションは、主権が生きるか死ぬかの層です。正しく持てば選択肢は残ります。間違えれば、その時点で先行しているラボから自分のプロダクトを借り直すことになります。
ハーネスを自分たちで持つ。自分たちのハードウェアで動かす。鍵を手元に残す。
執筆者
Dagu を開発中。信頼性と移植性のある自動化のためのセルフホスト型ワークフローオーケストレーションエンジン。
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